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“破滅”と“再生”の美学(真弓の雑記・はてな出張所)

だいたいいつも、アニメばかり観ています

都内某所での細田守監督講演会(議題:『おおかみこどもの雨と雪』)・きいたことメモ

90分弱でしたがガッツリ話してもらって僕満足。その議事録というかメモですねこれは。
以下時間順。記憶と走り書きを頼りに書いているので、細部は実際の内容と異なる場合があるので、予めご了承を。

細田守監督(以下監督)と東宝の川村元気プロデューサー(以下川村P)入場。細田監督は黒のポロシャツ。
・『おおかみこどもの雨と雪(以下おおかみこども)』興収30億突破というニュースを聞いた監督、「東宝配給だとこうなるんだなー凄いなー」という感想(作品の配給履歴としては東映→角川→東宝で、東宝は今回初)

■企画の最初のステップ、とっかかりの段階
・前作『サマーウォーズ(以下SW)』が複雑だったので、シンプルで力強い企画を出したかった。構想開始後しばらくは「シンプルで力強いってなんだろう」という追求をしていた。前作はキャラクターが多かったので、登場人物が少なければ描くのが楽だよね(笑)という発想も割とあった。
・三年前の夏に富山の郷里に帰った時、伯父さんの家に泊まりながらボヤッとイメージを練った。その年、母と祖母を続けざまに亡くすという経験があったので、子育てについて考えるようになった。特に祖母は終戦直後の食べ物さえ困っていた時代を生きてきたので、どうその時代を乗り越えたのか、その力の源は何処から来るのかが気になっていた。
・子育てをテーマにした映画によくある発想が「戦後の母三代記」のような形式にすることだが、そうならなかったのがこの映画のミソだし、アニメの細田監督らしい着想(川村P)
・「アニメ的に面白く無いとつまらないよね」という監督のモチベーションから、“おおかみこども”という設定ができるに至った。

■企画成立〜シナリオへの着手段階
・プロットは実作業一時間半で完成、約7ページ。但し構想には九ヶ月かかっている(笑)
・ありがちな「擬似家族モノ(例えば、何の変哲もない女子大生がある日突然狼男の子どもを授かるドタバタ育児記)」は描きたくなかった。面白そうには作れるだろうけど、自分にはダメだった。(前作SWがドタバタしていたので、それとの被りが気になった?)
・企画〜シナリオ段階での取材はほとんどしなかった。「取材の時になにか閃きを得ることなんて、あんまりないんじゃない?」と監督。(これには同意、取材はディテールの補強が主目的だと思う)
・後半部(コンテDパート相当?)の締め方がはっきり見えていたからすんなりシナリオが書けたのではないかと述懐。子育てを子どもの誕生から自立までと定義して、あとは二時間弱の映画としてどうエピソードを配分していくかの問題だった。

■映画としてどうまとめるかの段階
・ラストで泣かせることを狙った映画にはしてないし、必ずしもそうはなってないと思う(川村Pはラストでも泣けるそうな)
・回想シーンで時間遡行することが無く、クライマックスを壮大な音楽で極端に盛り上げようともしておらず(「例えば別れのシーンで久石譲さんの曲が流れて云々〜」と川村P)、普通の感動映画の作法とは異なったアプローチをした。監督「親子の別れは悲しい…みたいな纏め方は、この映画においては違うんじゃないか」
・C・イーストウッド監督は「あるべきことはある」ように描くが、それに近いのではないか
・観る側の映画リテラシーに合わせたエンタメ寄りの『SW』、それとは別のロジックで作った独特な『おおかみこども』
・「こんな内容の映画は他にないだろ!!」という監督の自負(少なくともアニメ映画では、という意味?富野由悠季監督のこの映画についての発言「過去のジャンル分けなどを飛び越えた物語になっている。」と大いに関連性がありそう)※参照記事:http://mantan-web.jp/2012/07/20/20120720dog00m200050000c.html

・「観客に面白いと感じてもらえる、そのもらい方は色々あるよね」という意識でやっている監督、「観客への届け方の意識が色々とあるのは凄い」と川村Pの評。

■他の映画から受けた影響やフィードバックについて
・「作家個人の内的必然だけをモチベーションにしても、映画制作は続けられないんじゃないか」と監督。
・他の作品に影響されて…というのはあまりない。というか映画を観ていられる余裕がない(アニメ制作が忙しすぎる)。川村Pと会うたびに「映画観た自慢」されるがそれは羨ましく、「プロデューサーっていい仕事だよね〜」と揶揄(会場爆笑)
・年間10本くらいしか映画観られないんけど、たまに観ると全部面白いという細田監督は得をしているかも。
Twitterから聞くニュースはバイアスがかかっていて面白い、カッティングエッジな感じ(川村P)

□質疑応答コーナー
・Q1「実写映画を撮る予定はあるか?(庵野秀明監督や押井守監督はそうしているがどうか)」
 →A1「あまり考えていない。アニメと実写ではリアリティレベルが圧倒的に違ってくるので、簡単に演出できるものではないのでは。押井さん庵野さんは実写映画の自主制作あがりで、僕は自主アニメあがりだから(笑)」(庵野監督版『帰ってきたウルトラマン』に言及していたが、笑っていたのは自分含む数名だけで目立ってしまった)

・Q2「“おおかみおとこ”(“彼”)の名前がないことと、死に方についての疑問」
 →A2「タイピングミスにより“狼男”を“おおかみおとこ”と誤入力したところ、その字面から受けたイメージがありがちな“狼男”とは明らかに違って優しそうだったのでそこから影響された。シナリオ段階では“花”の名前は“初音”だったが、関係者から「細田さ〜ん、初音ミクですか?w」と言われて却下になった(一同、この日一番の爆笑)。おおかみおとこが死ぬのは、花にとっては旅立ちのシーンにもなる(『銀河鉄道999』の例え)。大げさな事件としてではなく、日常の延長として些細なことで死んで欲しかった。」「キャラクターが死亡するシーンは、描き手の死生観みたいなものが現れてくるので重要(と、川村Pも同意)」

・Q3「映画のサービス精神についてどのように考えるか(『時をかける少女』『SW』との比較で)」
 →A3「『SW』はスラップスティック的なところもあるが、『おおかみこども』はもっと違うところを狙った。映画の面白さには様々な広がりがある。いわゆる「ジャンルモノ」という認識棲み分けは後から出来上がったもの。とにかく過去の映画になかった新鮮さを目指した」

・Q4①「東日本大震災がどのように作品に影響したか」②「おおかみおとこが子育てするという話にもしなっていたらどうだったか」
 →①「コンテ作業中に震災があった。コンテAパートとBパートの間。Aパートの終わりが東京を離れるシーンなので、その後富山に移動してからは影響があるかもしれない(自然の描写や“花”のキャラクターなど)。ニュースで観る被災者の姿に勇気づけられることがあった。ニュースではどうしても母親に注目してしまっていた。被災した後でも力強く生きていけるかどうか、という新たな軸ができた」
 →②「自分がもしも親だったら…と想定しながら描いていた部分もある。(主に“花”に感情移入しているかもという話は、アニメスタイル001号のロングインタビューにも通じる)構想段階ではもし“彼”が“やまねこおとこ”だったらと仮定したがすぐに却下された(笑)。キャラクターの性別は、自分の場合そこまで気にしていない」

※ここで地震が発生し、会場少し騒がしくなるが、監督の「強く生きていく力を身につけましょう!(笑)」という発言に一同和む

■本日のまとめ
・「『アニメ映画でありながら大人が主人公である』という設定はチャレンジであり、それでアニメ映画が成立するかといういわゆる“ジャンルメイク”への勝負をかけた。(ここで細田監督が熱くなったのは日本のアニメ業界の将来を睨んでのこと?)先ほどの質問とも繋がるが、“花(母親)”が主人公であるという点は、この映画の戦略上重要であった」
・「作品がどうなったら面白くなるか、どうしたら多くの観客に思いを届けられるか、考えていることは監督脚本プロデューサー他スタッフ全員一緒じゃないかな」