“破滅”と“再生”の美学(真弓の雑記・はてな出張所)

だいたいいつも、アニメばかり観ています

話数単位で選ぶ、2015年TVアニメ10選

年の瀬といえば大掃除、学校・仕事納め、そしてアニメ納め。
というわけで年末恒例、以下の企画に参加させていただます。
2015年も、アニメが面白すぎて困っちゃいました。


「話数単位で選ぶ、2015年TVアニメ10選」参加サイト一覧: 新米小僧の見習日記

<ルール>
・2015年1月1日〜12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・放送日時順。順位は付けない。

★リンク→当該話数の公式サイトあらすじ
■コメントなど


冴えない彼女の育てかた』 #9「八年ぶりの個別ルート」

脚本:丸戸史明 絵コンテ:こでらかつゆき 演出:小川優樹 作画監督:田村里美、長坂慶太

ストーリー | TVアニメ『冴えない彼女の育てかた』公式サイト


<建前>
澤村・スペンサー・英梨々の意地っ張りを溶かすため、バルコニーから校庭に引き下ろして説得する倫也くんがみょ~にプラトニックで微笑ましかった。花火散るロマンチックな画作りに時々必殺の"こでらアングル(斜め構図)"が挟まり、小気味よい演出が活きていました。
<本音>


ガンダム Gのレコンギスタ』 第25話「死線を越えて

脚本:富野由悠季 絵コンテ:宮地昌幸、斧谷 稔 演出:越田知明 作画監督:[キャラ] 菱沼義仁、可児里未 [メカ] 戸部敦夫、高瀬健一

Story|ガンダム Gのレコンギスタ


http://www.g-reco.net/img/story_large25.png
ガンダムのクライマックスって、こうだよなー!」と膝を打った一編。数多くのキャラクターの思惑が錯綜しとても混乱した局面で、大気圏突入に備え皆が息を呑み、敵味方を超えた一体感が生まれる。マッシュナーのように幻影に囚われて消えていく命もあれば、ルインとマニィ、クリムとミックがロマンスを見せたように戦乱の中で咲く命もまたある。モビルスーツ・ダハックが格納されたコアユニットを現す様は“大気圏出産”とでも言え、斬新なシチュエーションを見せてくれた。逼迫していながら、Aパート終わりに力を入れてオシッコを我慢するというクスリとする絵面も入れてくる、その緩急のつけ方が白眉でした。
『Gレコ』は、富野監督の培ってきたドラマツルギーを現在のアニメ技法で魅せる、氏の集大成のような作品に仕上がっていると思います。

(※吉田健一さん達アニメーターが『Gレコ』で試みた新しい描き方については、↓以下の特集に詳細がありますので、アニメの作画について興味があれば一読どうでしょう)
animeanime.jp


『SHIROBAKO』 第24話「遠すぎた納品」

脚本:横手美智子 絵コンテ:水島努、許琮 演出:菅沼芙実彦、許琮 作画監督:大東百合恵、秋山有希、川面恒介、武田牧子、朱絃㳓、徐正德 総作画監督関口可奈味

ストーリー|TVアニメ「SHIROBAKO」公式サイト

水島努監督については、「壁を自在に渡り歩く人だな」という捉え方をしています。リアルに見せるところと、極めてフィクショナルなところのさじ加減が、絶妙というか。
例えば『BLOOD-C』終盤のどんでん返し、『Another』放送当時話題となったアニメオリジナルのダンスシーン、『ガールズ&パンツァー』の戦車道のある世界観……観る人が「これはどういう事だ?」「ありえないよな」と首を傾げてしまうような、違和感のあるシーンを敢えて組み込む。
『SHIROBAKO』24話には、ぬいぐるみのミムジー&ロロと宮森あおいが会話し、ロロがあおいを殴るというシーンがあります。結局あのぬいぐるみがどういう存在だったのか(妖怪?守護霊?みゃーもりのイマジナリーフレンズ?)、それは十人十色の解釈ができるように思います。またこの前の第23話「続・ちゃぶだい返し」で木下誠一が出版社に突撃するシーンの大げさな戦闘も、極めてアニメ的で面白い表現でした。
監督以下全スタッフの想像力と尽力が、作中の武蔵野アニメーションにオーバーラップして、この素晴らしい最終回に繋がったのだと思います。見事な作品でした。


『ミカグラ学園組曲』 第2話「放課後ストライド

脚本:横谷昌宏 絵コンテ:吉川博明 演出:則座誠 作画監督:伊藤大翼、丸山修二 総作画監督:尾尻進矢

TVアニメ「ミカグラ学園組曲」公式サイト

sakuga.yshi.org

謎の小さな祠に触れた一宮エルナは、自分の中に秘められた力に目覚める。エルナはその力を発揮し飛んで走って跳ねて戦うことを、「ワクワクする」と表現した。この回の部活対抗戦シークエンスは前後と作画のスタイルがガラッと変わり、キャラクターやエフェクトの描線が躍動感溢れるものになっていました。(「NARUTO的な」とも喩えられた)荒削りでもあるアニメーションが、エルナの心情ともマッチしていて、印象的な場面でした。アニメートの"質"そのものの変化が演出として機能するという、アニメの原初的な楽しさを再認識させて貰えたエピソードでした。


血界戦線』 第11話「Paint It Black」

脚本:古家和尚 絵コンテ:伊藤智彦、松本理恵 演出:阿部雅司 作画監督:村井孝司、長谷部敦志、森島範子、諸石康太

STORY | TVアニメ『血界戦線』公式サイト


www.youtube.com
泣かせなら第6話「Don't forget to Don't forget me」、パンチ力なら第12話「Hello,world!」、変化球なら第3話「世界と世界のゲーム」、話数ごとに様々な魅力がある本作品。その中でも、自分にとってはこの第11話が、このアニメを受け容れるうえで最も支配的なイメージをもたらしました。ブラック/ホワイト/絶望王の三役を担当した釘宮理恵さんの比重(負担というか……)が極めて大きく、本当に「よく演じたな」と思います。彼女の様々なひきだしを開け放ち、耳と心に残る声を聴かせてくれて、ファンとしてとても嬉しかったです。砲丸のように質量感ある今エピソード、その続きを視聴するのに三ヶ月以上かかったという“事件性”も込みでの選出。


『響け!ユーフォニアム』 第十二回「わたしのユーフォニアム

脚本:花田十輝 絵コンテ・演出:三好一郎 作画監督:丸木宣明

第十二回 わたしのユーフォニアム:STORY | TVアニメ『響け!ユーフォニアム』公式サイト


sakuga.yshi.org
sakuga.yshi.org

青春といえば、くさい、くさい、くさい、そして辛気くさい。よくをかき、そして時に大泣きするから、瑞々しい経験として輝くのでしょうね。
猛暑で大汗をかき鼻血すら垂れながら、執念じみた自主練で追い込みをかける姿をまず捉え、熱量は高坂麗奈からを入れられてもまだ冷めず(ここで多くを語らず、ユーフォとペットのセッションで通じ合うのが抜群にいい)、それでも“失格”を告げられたあとの夜、彼女は「うまくなりたい……」と繰り返し念じながら、駆け出してする。の向こうに浮かぶ月と星のへ悔しさを投げつけた時、彼女は麗奈がかつて流したの意味を知った。
繰り返す「」のモチーフを媒介して、黄前久美子の心のボルテージがを打つ様を描いた、大変瑞々しいエピソードでした。


『城下町のダンデライオン』 第7話「王様は心配性/シークレットアイドル」

脚本:高山カツヒコ 絵コンテ:守田芸成・中村憲由 演出:本間修 作画監督:小田嶋瞳・宮川知子

城下町のダンデライオン 公式ホームページ|TBSテレビ

■『ダンデライオン』は、当たり前のことを当たり前にやろうという意欲が全面に出ていて、非常に好印象なアニメでした。兄弟姉妹と友人たちそれぞれがそれぞれを見守る、心の触れ合いを誠実に映し出しながら、キャラクターを可愛く描くことは外さず、かと思えば茜様がスカートを履き忘れる第4話のようにフェティッシュなコメディへと振り幅をもたす。妙に尖っているところがなくて、木曜深夜26時過ぎの放送にも関わらずホームドラマの暖かさを感じさせてくれた。意欲的なライブ・アニメーションとその後の「キマシ」が映えた第7話を選出はしましたが、ある意味この10選企画向きではない、どの話数も同じように安心して観られる作品ではないでしょうか。でも選んじゃった!
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『監獄学園 -プリズンスクール-』 第10話「素晴らしき尻哉、人生!」

脚本:横手美智子 絵コンテ:二瓶勇一 演出:高島大輔 作画監督:村上雄、坂本哲也、吉田優子、安田祥子、矢向宏志、前田義宏、中西 愛

第10話|TVアニメ『監獄学園 プリズンスクール』公式サイト

CV:神谷浩史がおっぱい派かおしり派かで煩悶するアニメは名作
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(※余談として、選定候補に次の第11話「エリンギ・ブロコビッチ」が最後まで競合していた、と記しておきます……)


『ヴァルキリードライヴ マーメイド』 第5話「ジャイアント・ガール、リトル・ハート」

脚本:雑破業 絵コンテ:朝倉カイト、金子ひらく 演出:川西泰二 作画監督吉田篤史、船道愛子、内原 茂、原山 智

STORY|TVアニメ「ヴァルキリードライヴ マーメイド」公式サイト

■↑のあらすじを読むだけでも常軌を逸していることはわかるのですが、映像の方も次から次へと斬新な(婉曲表現)シチュエーションが連発して、未知の領域をひた走っていますね。30分観るだけで、パンドラの箱を開けてしまったような末恐ろしい気分が味わえます。今年のアイディア賞はこれと『モン娘』第6種「脱皮と産卵する日常」が双璧。で、いいでしょ!(笑……


『落第騎士の英雄譚』 episode 12「無冠の剣王 Ⅱ」

脚本:ヤスカワショウゴ 絵コンテ:澤井幸次 演出:徳本善信、大沼心 作画監督:よち、野田康行、中西和也、明珍宇作、北原大地、山本亮

TVアニメ「落第騎士の英雄譚」|STORY

酒井ミキオさんの主題歌・挿入歌をふんだんに使って盛り上げるハイスピードアクションの爽快さと、花弁舞う“大胆な告白”シーンの多幸感が一気に味わえて、とても豪勢な最終話。ステラの王道な可愛さ(9話のロッジの場面はすごく……夜の一刀修羅です……)と、珠雫の奥ゆかしさ(10話の奮闘が印象深い)も堪らないコントラストでした。タイトル通りの駆け上がるような「英雄譚」を観せてくれました。これがあるから、選定は年末の末まで待つようにしているんです!(本当は、グズでノロマなだけ!)



以上が今年の10選です。
「100の凝らした言葉より、1の煌めくアニメーション」という裏テーマで画像多めにしてみましたが、ちょっとPC負荷が大きめに……ご容赦ください。


「話数単位で選ぶ、TVアニメ10選」を語る会
www.loft-prj.co.jp
↑このような興味深い企画も動いているみたいですね。語る機会を通して、受け手と創り手が相乗作用を起こせるような、そんな良い関係を築いていければ更にアニメが楽しくなると思います。受け手としてはますます“アニ眼”の研鑽が欠かせませんね。